人が逆上するわけ

 今年の9月からアメリカに高校留学することになっている息子に、パスポートを取る手続きに行かせた。

 案の定、持っていくものに不備があったりもしたが、未成年であり、大人とは違うものが必要であるらしい。役所の別のフロアに行き必要な書類を取る手続きをしていると、初めてのことでもあり窓口でまごついている息子に、後ろから中年男が文句を言ったらしい。
 「お前みたいな奴が来るところじゃないんだよ。」
息子が頭にきて振り向きざまに、
 「うるさいんじゃ、ハゲ!」
と叫んだところ、中年男が顔を真っ赤にして摑みかかってきたのだそうだ。
 「それでどうなったの?」
 「オッサンは警備員に取り押さえられた。」
と涼しい顔で言いながら、別のことで首を捻っている。

 「僕みたいないたいけな子がけなげに初めての難しい手続きをしているのに、あのオッサンはいったいどうして怒るのか。それに、自分がけんかを売ってきといて、ハゲといわれたぐらいでどうしてあれほど逆上するのか。」

 私は知っている。簡単なことである。オッサンにとって、「ハゲ」は最も触れられたくない急所なのだ。だから、たとえ息子が、しおらしい声で「ハゲ」とひとことだけ言ったとしても反応は同じだったに違いない。

 しかし、私には、そんなことを不思議がっている息子のほうが不思議だ。
 息子は、
 「僕は暗い夜道ではそんなことしないもん。危ないから。」
と言った。
 アメリカで撃たれずにすむ事を祈るばかりだ。
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by mayumi-senba | 2004-03-27 16:15 | 息子
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