私の宗教

 神様の存在を意識したのは、隣のテニスコートの草むらから聞こえる虫の音だった。

 私にこの美しい調べを聞かせてくれるのは、神様がそこにいると考えなければどうにも合点がいかないのだ。

 もちろん、それが虫たちの求愛の唄であることは知っている。しかし、求愛なら虫のメスにだけ聞こえる波長でよいし、人間にとってもっと不愉快な音であってもよい。
 神様がいると考えないと、腑に落ちない。

 ならばその神様はどういう存在なのか、キリスト教の神様でもヒンズー教の神様でも、イスラム教の神様でも、そして恵比寿神社の神様でも間尺に合わない。

 親鸞の説く阿弥陀如来が一番近い感じがする。

 しかし、私の神様はもっとシンプル。

 なんか知らないけど、そこらじゅうにいて、どこにもかしこにも満ち満ちていて、私を生かす。
 「楽しいことがあるんだから、苦しみも悲しみもありだよ。」
と声にならぬ声でささやきながら、迷い、悩み、己の卑小さをかみ締める私を、そのまま生かす。

 決して、教え諭したり、その状況からわかりやすく救ってくれることはない。
 ただ、慈しみ愛してくれる。その証拠のひとつが、虫の音だ。

 「死んだらどうなると思いますか?」
と問われ、
 「息子と孫の心配はあの世でするけど、その先はいなくなる。」
と直ちに答えた。

 身の丈ほどの、わがまま勝手な、これが私の宗教だ。

 
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by mayumi-senba | 2005-05-05 22:19 | 自分のこと
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