予言

 息子が5年生になって間がないころだろうか。
 
  子どもたちを見ていると、じゃれ遊んではケンカをしているというような、さながらサル山の子猿が、将来の権力闘争の練習をしている様相のころのこと。

  誰かが、
 「お宅は子どもがケンカしても怒らないんですか?!」
と言っていたが、おかしなことを言ってもらっては困る。うちの息子ほど「ケンカをするな」と叱られた子も少ないだろう。ケンカするから怒る。ケンカしなければ怒らない。

 ケンカするなと言ったらケンカをしないというようなものではない。

 私は息子に言った。
 「もうすぐあんたたちはケンカしたくてもできなくなる。多分6年生になったらそうなる。」
 
 当然息子は、
 「どうして?」
と聞くので答えた。

 そうやってケンカを繰り返しているしているうちに、誰が誰より強いか、本人もまわりもケンカしなくてもわかるようになる。するとけんかする必要がなくなる。
 どちらが強いかわからない場合は、お互い、ケンカをして万一負けるようなことがあっては取り返しがつかないので、双方がケンカを避けるようになる。
 かくしてあんたたちはケンカをしなくなるのである。

 そして6年生の時だったか、息子が言った。
 「母さん、僕らホントにケンカしなくなった。」

 そのときの息子の眼差しには、母親を見るというより人生の師に出会った、というような驚きと尊敬の念が含まれていた。

 もちろん後にも先にも息子がそんな眼で私を見たのはそれ一回きりだ。
  
 私がそんなことを言えたのは、身に覚えがあるからだ。
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by mayumi-senba | 2004-05-08 14:59 | 息子
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