記念日

 高校のころ、仲のいい友達がある朝言った。

 「今日はね、学校と全然関係の無いことで気分が落ち込んでるから、多分笑えないし、話しかけられても返事しないかもしれないけど、みんなには全然関係の無いことやから、気にせんといてね。気ー悪うせんといてね。明日かあさってには元に戻ってるから、私のことは心配せんといてね。」

 そしてその日の休み時間、彼女はほとんど一人で誰とも口をきかずに過ごした。
 
 私たちは、彼女に言われるがまま、彼女のいない仲良しの友人たちで、彼女のことをかなり気にかけながらも、話題にするのを憚って何とかその日をやり過ごした。

 本人が心配されたくないのだから、心配せずにはいられないが、心配しているところを隠すぐらいのことはしようと暗黙で了解しているのを、周りの私たちはお互いに知っていた。
 そして、黙ってはいても、私たちが心配していることを彼女が知らないはずはなかった。

 その翌日か翌々日、彼女は元の明るい高校生に戻っていて、私たちはみんなでお好み焼きを食べに行った。

 どうにもならない日には、こうやって過ごせばいいんだと、私はひとつ大人になるすべを学んだ気がした。私にとっても、何か名前をつけたいような記念日だが、何月何日だか覚えていない。
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by mayumi-senba | 2006-02-26 23:43 | 自分のこと
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