息子を守れる範囲
息子がまだよちよち歩きの頃のこと。 私が油断したのだが、気がつくと、細いけれども車がぎりぎり離合できる道の幅の4分の1くらいのところに、無邪気な顔をした息子がいた。そしてそこに車がやってきたのを見て、私はなんのためらいもなく飛び出して息子を抱いた。 今ここでこんなことを書いていられるのは、車がほんの数センチ手前で停車したからだ。 あの後、どう思い出しても、そのときの私にはためらいはなかった。自分で、 「私は、動物なんだなー。」 と心底感心した。 怖いのに挫けずに飛び出したのではない。気がついたら飛び出していた。 こんなことってあるんですね。 息子を生む前、こんな設定の映画やドラマを見ては、 「自分にはこんなことは出来ない。こんなことってほんとにあるのか?珍しいことだからドラマになるんじゃないか?美しすぎる・・・。」 と考えていた。 それが、当の母親にとってこんなにあっけないことだとは・・・。 同じ場面で飛び出さずにその場で固まる人もいるだろう。その人と飛び出した私との間には、「何かにそうさせられたという意味」で、違いはない。その瞬間には自分の意思はないのだ。 飛び出したら二人とも死んでしまうところが、固まったために少なくとも自分は助かったということになれば、固まったほうがよかったことになる。 私は、そんなことを、偉いだとか美しいとかという言葉で飾って欲しくないな、と思った。強いとも言って欲しくなかった。 「私も子どもが欲しいな。」 ということも、そう思おうと努力したわけではなく、思ってしまったわけで、こんなこと、人に頼まれたり、世間体のために「しよう」と思ってするものではないし、出来るわけでもない。 というのが私の実感です。
by mayumi-senba
| 2004-07-15 20:19
| 息子
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