私はいったい何について後悔しているのか・・。

 去年の今頃、父の体の具合が尋常でないことをまだ知らなかった。

 腎臓の機能がかなり落ちており、透析をするかしないかというところで踏ん張っているという認識だった。

 いつまでも幼く不器用な母と暮らしていた父が、母を大事にしていることを私は多少不思議に思っていたが、「そんなところがかわいいのかな。」ということで、納得していた。

 ところが去年の今頃、
 「お母さんはおかしなことを言うな・・。」
とはじめていった。認知症ということではない。

 それは、私にとっては子どものころからずっと続いていることなので、父がまさか今頃気がついたのだとは思えなかったが、父の口ぶりは、最近知ったことを誰かに話して自分の頭を整理している、というような感じだった。

 私はこの時、父が、いつも近くにいる母のことを、大切にしているように見えながら実は、
 「まじめに見ていなかった。」
ということに気がついた。

 父は、人の面倒見がよく、適度に面倒も見られながら多くの人に愛され、亡くなった時には血のつながりのない母がたのいとこたちや近所の人たちが、まるでが自分の親が死んだかのように悲しんでくれるのも私はごく自然に受け入れていた。

 母は、その世代の人が多く陥りがちなことなのか、彼女の特質なのかはわからないが、人からどう見られるか、何を言われるか、ということが関心の多くを占めている感じ。、言っていることは世故長けているように聞こえなくもないが、子ども心にもうわっつらで空疎なことがわかった。
 もしかしたら、自分が幼いためにその深遠さがわからないのかとも思ったが、いまだに同じ感想しか持てない。

 要するに、よい妻、よい母と呼ばれる行為なら身を惜しまないが、それがほんとうに相手のためになっているかどうかということには、関心が薄いように見えた。

 父はいよいよしんどくなって、やっと骨身に染みたのだ。元気な時は、父の周りにはいつも母以外の誰かがいたために気がつかなかったのだ。そんなひととのくらしのしんどさに。

 私は、父に、
 「え!今頃わかったの?ずっとそうだったよ。」
と、今思えば父にも母にも残酷なことを言った。

 父は私たち姉妹以外の多くの人にも同じような愛情を注ぎながら、私たちにも十分すぎるほどの愛情を、「この上なく大切にされている」という実感を与えてくれるのだった。

 そんな父が、もしかしたら母にだけは関心がなかったのかもしれない。

 父に望まれて結婚したということが母の誇りであったし、実際父もそう話していた。父は長い間母に関心を失くしている自分に気がつかなかったのだ。そう感じた私は、身内の気安さで父に思った通りのことを言ってしまった。

 その後しばらく沈黙があったことだけは覚えているが、会話が再開したときの話題が何だったかは覚えていない。



 
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by mayumi-senba | 2008-08-23 23:25 | 自分のこと
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