メガネが悲しくなるほど似合わない。
でも近頃のメガネフレームの豊富さはたいしたもので、そんな私でもなんとか様になるものが見つかる。 最近愛用しているものを購入する時のこと。 私は店員に、 「とにかくなんとか様になるものを見つけてください。今つけてるものが今までで一番良かったから、これに近いものが欲しい。」 と言った。 30代半ばくらいに見えた彼は、次々と私が求めているものとは似ているような似ていないようなものを出してきては、私にため息をつかせるのだった。 そして必ず言い添えるのだ。 「これは最近入荷したもので、今流行りのタイプです。」 私はそのつど、 「流行ってるかどうかには関心ないから・・・。」 というのだが、何度言っても言い添えるのだ。 で、やっと出してきてくれたものが今使っているもので、私は、 「これならいい。」 と言いながら、顔の角度を変えたりしながら、チェックらしきことをしていた。(何をすればチェックになるのかわからないけど。) 彼は、 「これは、今かけておられるのよりかなりいい品です。〇〇製ですから軽くってやわらかく、反りもいいので顔への負担がすごく少ないです。」(〇〇については関心がないので聞いていない) と言った。私は、品質なんか言ってられないと思っていたので、 (いい物の中に自分に似合うものがあったのなら、これは僥倖である。) と満足だった。 なぜならその時店にかけていった一番お気に入りだったメガネは、別のお店で一番とは言わないが2番目くらいに安く、したがって掛け心地は決していいものではなかった。それでもそれを選ばずにはいられなかった忸怩感は、今でも思い出せるほどである。 そのことを思い出しながら満足している、その私にむかって彼はいうのだった。 「これは最近入荷したもので、今流行りのタイプです。」 私はイラっとしたので、つい、 「関係ない。」 と、言わずもがなのことをいってしまって、自分の不快感の嵩(かさ)を知ったのだった。 彼が信じ込んでいるほど、この、 「今流行りのタイプです。」 という言葉は、人にものを買わせる力を持つのであろうか。少なくともそう信じ込んでるように見える彼は、その言葉に弱いのだろう。 考えてみれば、私はもはやお店の人の、 「お似合いですよ。」 という言葉にも、まったく動じなくなっている。もはや、と言ったが、20代の頃にはすでにそうだった。 以前洋服を買っていたお店の店員さんは、本当のことを言ってくれたので信頼して贔屓にしていた。すると、だんだんと、私のために仕入れてきた、という服を出してきてくれるようになり、それは確かに私に似合うのだった。 私が行かないシーズンもあったから、そんなときその洋服は別の誰かに売られたのだろう。でも彼女はたぶん、その人のために仕入れたとは言わなかったに違いないと思える。 そのお店は、もうない。
by mayumi-senba
| 2008-12-09 03:16
| 世間のこと
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