お餅が美味しい。

 お正月に買った雑誌の特集に、お餅のいろんな食べ方が出ていた。

 それを見てから試してみたくなって2種類ほど作ってみたらとてもおいしかった。

 お餅って好きな人が多いから変に聞こえるかもしれないけど、もともと私はお餅がそんなに好きでなくて、子供のころからお正月のお餅がいやだった。

 「とにかくお雑煮のお餅は一個にして。」
と祖母に頼み込んでいた。

 祖母は、お正月にはお餅を食べるもので、たくさん食べれば食べるほど幸せになれるのだと信じているようだった。私はできたら食べたくなかったけど、それは許されないのだった。

 ここにきて急にお餅が美味しい。

 それで思い出したことがある。

 ある入院中の老女が、ハンストをした。飲み食いしないでベッドに寝込んでいる。点滴も受け付けないで、高度の脱水になり、深部静脈血栓症という状態になった。あまりに血が濃くなって、足の静脈の中で血が固まってしまったのだ。非常に危険な状態だが、この状態になると抵抗できないので早速専門医のところに送って治療してもらった。

 治療を終えて帰ってきてもまだすねている。ここで担当医が私に変わったので、彼女に何をすねているのか聞いてみた。

 「私はヨモギパンが大好きで、それが楽しみで生きているのに、喉を詰めるから危ないって言って看護婦さんたちが食べさせてくれんのよ。近所の爺さんも刺身をのどに詰めてしんだ。年寄りはよう餅をのどに詰めて死ぬ。昔から年寄りは好きなものを食べてのどに詰めてしぬもんなんよ。」

といった。私は、なんかあっぱれな生き方を教えてもらったような気がして、そしてとりあえず病院の中で人目のあるところなら何とか救えるのだから、家族に相談してみた。

 「むしろこっそり食べられたら、喉に詰めても助けられません。のどに詰めることを覚悟で人目のあるところで食べさせてあげてもらえませんか。でなければ、また本気でハンストされてほんとに死にますよ。」

と言った。ご家族は相談のうえ承諾された。

 本人が死んでもいいと言ってるのだから、ご家族がなんと言おうとそうしてもらえばいいようなものだが、昨今そうもいかないのである。

 それから彼女は食欲を取り戻し、どんどん元気になっていった。そして元気に施設へ移っていかれた。

 私はお餅が好きになった。
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by mayumi-senba | 2009-02-04 21:13 | 自分のこと
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