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在宅復帰・・・「お二人でしっかり話し合ってください。」

  こんなことがある。ときどき。

 脳卒中を患ったため、体が不自由になったが知的には問題がなく、介護保険のサービスを受ければ一人暮らしができる男性。

 この男性は在宅復帰を希望している。

 しかし、彼には同居する妻がいて、妻が、

 「自分には仕事があるので世話ができないから、うちに帰ってきてもらうと困る。」
 「自分は身体が弱いので世話ができないから、うちに帰ってきてもらうと困る。」
 「自分には、すでに一人介護をしている身内がいるので、うちに帰ってきてもらうと困る。」
 etc。

 このとき、夫がそれを聞き、施設入所を受け入れれば問題はない。
 
 夫が、
 「それでも自宅に帰りたい。妻の世話は受けない。」
と言う。

 すると妻は、うちに帰ってもらうと困るということとその理由を、夫ではなく私たち医師に、繰り返し訴えるのである。

 そもそも、介護サービスを受ければ一人暮らしができる人が、
 「退院してうちに帰りたい。」
といえば、私達にはそれを止めることができない。
 「そうですか、どうぞ。」
というしかないのである。

 すると妻は、
 「私はどうなるのですか!!」
と怒りを込めて私たちに言う。

 「一切世話をしなければよい。」
と、私たちは、これもそう言うしかないのである。すると、

 「目の前にいるのにそんなわけにはいかないでしょう!!」
とさらに怒りを込めた言葉が返ってくる。

 「世話をするかしないかは、あなたの自由です。どうしても夫が帰ってくるのが嫌だというのであれば、夫婦で話し合って別居するしかないでしょう。」
と答える。

 妻は、そこのところのやり取りや手続きを自分でしたくないから、医師から夫に、
 「自宅に帰るのは無理だ。」
と言ってほしいのだ。病状を理由にして。

 言いたいことはわかるので、同性として同情は禁じえないが、私たちは夫婦間の問題を裁いて判決を言い渡したりする権限を持たない。

 私たちにできるのは、

 夫に、
 「奥さんの手をわずらわさないようにしてあげてください。」
とお願いをするか、
 「奥さんが、目の前にいたらどうしても世話をしてしまうと言ってるので、そうすると奥さんが大変なので施設に行ってください。」
と、これもお願いするしかないのである。しかし、そもそも独居が可能な人の施設入所ということじたいが、制度上問題がないではない。

 実際はこういう場面で、医師は裁判官のようなふるまいをすることが多い。

 私は、それはどうかと思う。

 「お二人でしっかり話し合ってください。」

ということにしている。

 

 
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by mayumi-senba | 2009-09-07 17:29 | 世間のこと
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