タケノコ

  生まれて初めて焼肉屋さんで「タケノコ」と呼ばれるものを食べたのは、もう30歳は優に超えていた。

  その形状や弾力から見て、それが大動脈であることはすぐに分かった。

  初めて食べたものだから、

  「ああ、これは大動脈だ。」
とつぶやいたら、同席していた教員である友人が、
 「頼むからやめてくれ。」
と言った。

  とても仲の良い友人とでさえ、こんなに感覚が離れているのだということを思った。

 やめてくれと言われたから口にするのはやめたが、出てくる臓物はすべて言い当てることができた。できたからと言ってどうということなく美味しいものは美味しくて、口に合わないものは合わない、というだけのことだ。

 もし道路に切断された人間の上肢が落ちていても、
 「人間の腕が落ちている。警察に通報しなきゃ。」
と思うだけだろう。腕から先がほんとうに恐ろしいのは、それの持ち主についているときで、かつ、その持ち主が凶暴であるときであって、もはや動かない上肢は何もできない物体でしかない。

  私はそのように考える。

  この感じは、同業者でないとわからないだろう。

 そう思うと私たちは、他者から見ると気味の悪い職業集団かもしれない。

 中世ヨーロッパなら魔女狩りに合うはずである。
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by mayumi-senba | 2009-10-16 23:17 | 自分のこと
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